【所感】インターカレッジ男声合唱団 ヴォーチェス・ヴェリタス 第7回演奏会

インターカレッジ男声合唱団 ヴォーチェス・ヴェリタス 第7回演奏

平成29年3月17日(金)
18:30開場 19:00開演
渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

曲目
第1ステージ
多田武彦 男声合唱組曲「柳河風俗詩」
第2ステージ
2017耕友会全合唱団共通プロジェクト コダーイ没後50年記念ステージ「コダーイ・ゾルターンの遺言2」
Fölszállott a páva <孔雀が飛んだ>
Huszt <廃墟にて>
Karádi nóták <カラード地方の歌>
Bordal <酒宴の歌>
第3ステージ
松下耕 男声合唱組曲「秋の瞳」
第4ステージ
信長貴富 男声合唱とピアノのための「新しい歌」
アンコール
Eric Whitacre Lux Aurumque
松本望 男声合唱とピアノのための組曲「天子のいる構図」より V.Finale
演奏について
  • 男声合唱組曲「柳河風俗詩」
    ごく標準的な演奏。凡庸な演奏なのかというと、そういう意味ではない。正しい練習が必要不可欠。彼らは今の時点でできることをしっかり練習したのだろう。
    欲をいえば、もう少し情感に訴える歌い方でも良かったのかもしれない。少し表現に乏しい演奏と感じた。しかし若者らしい素直な演奏で良い。
    個人的には昔プレイアードが歌ったシビれるタダタケをもう一度聴きたいと願っている。耕友会のみなさん、卒業しても男声合唱を聞かせて欲しい。
  • 「コダーイ・ゾルターンの遺言2」、男声合唱組曲「秋の瞳」、男声合唱とピアノのための「新しい歌」
    テノールに課題あり。特にトップはC-3POみたいな動きをして歌う人が多い。セカンドも体を固めてしまう人が多く、高声は全体的に肩でブレスをする傾向。そのためトップは人数が多い割に声に厚みがないし、セカンドも含めて発声が原因で音が不安定。そして歌い方が良くないために、演奏会が進むにつれだんだんと音程が怪しくなっていく。また、体にしなりがないので全体的にリズム感がない。他方、バスバリは非常に良かった。テナーがパリッと割れるモナ王の様なカタめな声なのに対し、ベース系は柔軟している横綱のようにしなやかで厚みがある。バスの安定する合唱は音が充実する。そしてとにかくバリトンが歌うメロディーが美しい。音楽のしっかりとした土台を感じる。
  • 金髪の彼
    ところで、2月11日(土)の演奏会でも思ったことだが、金髪の彼は上手い。声質だけで考えると、平凡で特徴の無いバス声かもしれない。しかし彼の声は表現に富む。そして聴衆を引きつける。大和田さくらホールでは不思議な音がたくさん聞こえる謎めいたホールだが、彼の歌声はノイズを振り切って音楽だけに集中させてくれる。小さなカフェで彼を目前にして聴くかの如く、彼の歌声は前にでてくるような感じがする。学生の歌にここまでの魅力を感じたのは久々だ。彼の歌いっぷりに乾杯。
    もちろん合唱の時は不用意に一人だけ全面に出てくることはない。バスパートは他のどのパートよりも声のブレンドが上手くいっていた。
  • アンコール
    「なんだ、普通に歌えるじゃん!」 アンコールでは、後半ずっと声が潰れていたテナー陣が見事に復活した。ポテンシャルは高いのだろう。アンコールの2曲は聴衆を魅了していた。
指揮について
松下氏の指揮を観ていて感じたこと。
  • 3ステージは煽動的すぎるように感じた。氏とVVは気の知れた仲であろう。しかし松下氏の作品は情熱だけでは歌えない。ブリリやガイアで振るときのように、丁寧な指揮の方が完成度は高くなるのではと感じた。演奏全体の中では発声の出来不出来など些細なことだと思いたいが、どうしても高声部が耳についた。松下氏なら途中で修正する機会はいくらでもあると思う。
  • 松下氏の指揮は、たとえ振っていなくても拍がわかりやすい指揮だ。それは歌い手にとって非常に有り難いことである。だから、全てを松下氏に預けるのではなく、もう少し団員個々人が縦の音楽を意識できるといいなと感じた。
  • 歌い手の指揮に対する依存度合がかなり高い。氏の指導が原因ではないと思いつつも、依存度合いは気になる。以前のVVは所謂学生風情のバンカラさがあったが、そういう荒々しさに秘めた自立精神は影を潜めている。そのせいか大学合唱というよりはむしろ、高校合唱の延長のような歌を感じた。どちらが良いとか悪いとかそういう話ではない。ただ、良くも悪くも和を重んじた演奏であった。きっと彼らVoces Veritasは、皆が非常に素直な心の持ち主なのだろう。だから松下氏と波長を合わせたかのような演奏になるし、そのような演奏ができるのだ。
演奏会全体について
演奏のしやすさは別にして、一聴衆としては満席のホールは非常に心地よい。たくさんの人々と音楽を共有できるからだ。開演を心待ちにする大勢の人々、彼らの表情を見ればVoces Veritasで歌っている若者がいかに魅力的なのかがうかがい知れる。
耕友会コンサートで完成度の高い演奏を聴いて、チケットを購入した。音楽に夢中になれる様な演奏を求めていたので、その意味では少々期待外れであった。しかし、演奏を巧拙だけではない良さを味わうことができたし、なにより最後まで彼らの音楽と向き合うことのできたのは良かった。
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