【所感】Soundtrack.

平成27年12月16日(水)

富山のはるか

Soundtrack.

平成27年12月11日(金)~平成27年12月13日(日)

出演: 左藤英美、毛利悟巳、荒木晋、渡部隆敏(空白バカボン)
脚本: 戸塚康崇
演出: 松尾祐樹

上野小劇場

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2日目、12月12日(土)19時からの回を観劇。

演劇を観るのは高校の先輩の舞台を観て以来かもしれない。

時間が取れず観劇してから4日も過ぎてしまった。感じたことを記す。

突如として空の上に現れたクジラ(くじら、鯨?)。クジラは暦の上では夏(旧暦では秋では…?)にも関わらず、季節は冬になった…

学園物の恋愛劇。観てから時間が経ちすぎてなんともいえないが、素直に面白かった。

Soundtrack.という言葉がどこから採られたのかわからないが、ラジオにもカセットプレーヤーにも見える小さな音響道具から奏でられる音のことなのだろうか。そうするとtrackの意味をどう考えるかだが…私にはわかならい。

あまり音楽を意識させるような内容ではなく、物語を語るというよりは、その物語の中にいる人物の感情描写に焦点が置かれていたように感じた。突然訪れた冬。この謎めいた現象に謎のバックパッカー少女ハルとともに抗う英雄譚でもなく、この少女の生い立ちや運命に差し迫ることもない。まして何を思い何を希望していたのかさえ感度の低い私のような人間にはよくわからなかった。誰かの内面に焦点をあてて話が広がることもあまりない。この舞台では、私たち観客はあくまでも観客の儘である。

しかしこの舞台表現の魅力はここにあるのかもしれない。Soundtrak.はあくまで主体的に音楽を奏でるものではなく、あくまでも聴くものである。登場人物に自分を重ね合わせすぎる必要はなく、少し「何故?」が残ったまま話が先に行くことで、ワクワク感を感じることができるのかもしれない。

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もう細かい設定を覚えていないので箇条書きに

よかったこと

  • ラジオのようなプレーヤー自体はなんだかよくわからなかった。しかし自らスイッチを押すことで音楽を奏で、新たな空間を演出するというのはなかなか新鮮だった。役者が音源を持って移動することで、舞台が立体的になった。
  • 大きな人物が描かれた雪。気が散ってしまうが、奇怪さについて思いを巡らせているうちに舞台の転換をする時間を稼ぐことに成功している。そういう意図ではないのかもしれないが私は良かったと思う。
  • 現代的な世界観、つまり日常生活とかけ離れていてよくわからない世界観が広がっていたが、始まってみると意外なほど違和感を感じずにこの空間を受け入れることができた。
  • 3人が幼なじみという設定が自然に演じられていたように感じる。ハルとの対比もよかった。

よくなかったところ

  • 冒頭と最後の場面は良くなかった。冒頭は物語の設定を知る重要な場面だった。しかしカナデは誰に伝えるというわけでもなく独り言のように語っていた。それは演技で表現するものであり、言葉は明瞭にかつ聞き取れる速さでなければ、全く意味が無いと思う。夏が冬になったのはわかったが、クジラの部分が良く聞き取れず、ハルとの出会いの場面を理解するのが難しくなってしまった。またラストシーン2つもよくなかった。台詞より先に壁に掛けてあった文章が表出されると、必然的に意識が文字に向いてしまう。カナデの言葉より先に文章として頭に伝わってしまい、言葉の凡庸さに幻滅してしまった。
  • 最後のカナデでアキラのギターの場面。そういえばあの後アキラはどうなったの?という感想は観劇後に起こるくらいで恰度よかったのではないだろうか。それくらいアキラたちからカナデたちへの切り替えが上手くいっていたのにもったいない。
  • 雨の音?のような水の音はどういったタイミングで流していたのが意図が不明だった。使われ方に意味があるようには感じなかった。

代役で主演を演じた毛利悟巳氏は非常に美しかった。ヒロインにはぴったりの美少女だと思う。3人と1人(もしかして1匹?)の対比が非常に良くできていたのは彼女が急遽この舞台に加わったからではなく、演技力によるものだろう。しかし彼女の魅力によって、ハルがどのような魅力を持つ少女だったのかイマイチよくわからなかった。もちろん舞台はそこに表現される全てが織りなすものであるので、役者自身の持つ魅力もまた舞台の魅力なのだろう。個人的には、非常に面白い話だったので、ハルがどのような位置づけを担っているのかをもう少し冷静に感じ取れる舞台だったらな、とも思った。「富山のはるか」という表現主体も、そこに急遽加わった毛利氏も、どちらも今後が楽しみである。

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