平成27年6月4日(木)
コーラス・インフィニ☆公演Pleiades~vol.3~
コーラス・インフィニ☆の演奏会に行ってきた。
この合唱団は結成された当初から演奏会を聴いてみたいと思っていたのだが、ついに念願叶った。
コーラス・インフィニ☆について
国立音楽大学附属高等学校合唱部を母体とする女声合唱団。Wikipedia・公式サイトによるとコーラス・インフィニ☆で指揮を振っていた荒木先生は校長を務めているようだ。
感想
1st Stage
あまりお上手でないのがよく分かるステージであった。声のブレンドされておらず、ミュージカルで後ろの人々が歌う斉唱のようである。異質なものの集合体を表現するのであればそれでよいのかもしれない。ソプラノとメゾの下だかアルトの上だかくらいのパートが非常に不安定だった。ソプラノは声に艶がなく、厚みも感じられず。2部合唱になると主旋律が主旋律らしく聞こえるようになる。つまりメゾソプラノの活躍が大きい。3部だと真ん中が出っ張っていて不自然だったともいえる。
また、全員で同じ音程で歌っていても揃っていないのは残念だった。一般的な話として、音大生は声楽のトレーニングと合唱の練習をどちらも行うためか、あまり合唱がお上手ではない…ことが多いように感じられるが、コーラス・インフィニ☆でもそうなのだろうか。
声を揃えること、うまく混ぜ合わせることは重要な要素の一つである。それが全てではないが、しかし多くの合唱という音楽の形態では、声を揃えることが求められるだろう。曲に応じて歌い方を使い分けられるようになるか、選曲を自分たちのスタイルに合わせられるといいなと思う。困ったことに曲に関する感想はまったくない。覚えていない。演奏の善し悪し以上に選ばれた曲の持ち味を全く魅せることのできなかった残念なステージであった。
印象に残っていたのは菊池先生のピアノ。春に合唱部の演奏会で聴いたときは、菊池先生はピアノコンチェルトに合唱の伴奏がついた曲を演奏しているようであったが、このステージでは伴奏、ではなくかなりリードしていたが、合唱、そして指揮を引き出そうとしていたように聴こえた。
2nd Stage
指揮者湯田氏のパーカスはイケてなかったが、この合唱団の持ち味が活かせていたステージだったと思う。会場を包み込むような臨場感のあるソロを聴けたわけではないが、温かみのある音楽を楽しむことができた。訓練された声というよりは学芸会の延長上のような演奏であった。ソロが終わってもまったく拍手が起こらないことが端的に示している。 だが、音楽を楽しむ雰囲気が伝わっていないかというとそうでもない。演出を考えて練習を積み重ねてきたのだなという努力は彼女たちの表情から感じられた。ステージ上で笑顔を振りまいてくれると、聴いている我々も朗らか気分になる。奏者と聴衆が対峙するとき、互いの表情は重要なのだなと感じた。
声に着目すると、ガサツな揃っていない発声はこのステージに限って言えば魅力を生み出していた。コーラス・インフィニ☆は声が揃っていない。そのため音圧を感じられない。しかし一人一人の歌い手が際立っていたことによって臨場感のある演奏になっていた。
音楽は、音が観客の聴覚まで物理的に届かないと全く意味がない。しかし、所謂「そば鳴り」の発声で、声量もない歌い手が多かった。ホールの後ろまでソリストの声が聞こえていたかどうかは私には分かりかねるが、空間を鳴らすことを念頭に置いた練習を心がけていただくとなお良いと感じた。
3rd Stage
うん、つまらなかった。
総評
先生方のピアノは大変美しく、それだけで聴く価値のあるものだと思う。でもコーラス・インフィニ☆の方々がなにをしたかったのかはイマイチよくわからなかった。何も考えていないということはないだろう。でも、演奏会で何を訴求したかったのかはよくわからない。曲のよさ、演奏のよさ、演出のよさ、コーラス・インフィニ☆という合唱団そのものの魅力、何を訴えたいのかイマイチ伝わらなかった。
コーラス・インフィニ☆は中高合唱部のOG合唱団だ。多くの時間を共にしてきた仲間と演奏会を開くのだから、何か演奏会で表現したいものがあったはずだ。
舞台に立つということは極言すれば「私たちを観て!」ということであろう。演奏会では、観られるべきはその音楽であり、努力した過程、頑張りを観るわけではない。しかし「私たち」の何を観るべきだったのか、何を味わうべきだったのかが、我々聴衆には、少なくともわたくしにはわからなかった。
音楽は中味がなくても音が美しければそれでよいという側面を持ち合わせている。しかし今回の演奏会は中味もないし、外見(容姿のことではなくて、音に附随するさまざまな情報)も特段魅力的ではなかった。
コンクールや合唱祭等でコーラス・インフィニ☆の演奏を聴いていると2年に一度くらいでとてもいい演奏に出会う。(何を以て「いい」と述べているのかわたくし自身にもわからないが)
次回の演奏会はもっと「いい」と思える演奏をたくさんして欲しいと思った次第である。